外壁と屋根は同時に塗るべき?足場代より先に確かめる3つのこと

目次
「外壁と屋根を同時にやれば足場代が1回で済みます」——よく聞く説明です。間違ってはいませんが、これだけで決めると損をすることがあります。同時にするかどうかを決めるのは、足場代より先に確かめるべきことが3つあるからです。屋根と外壁で塗り替えの時期がずれていないか、屋根材がそもそも塗る材料か、そして石綿(アスベスト)の事前調査がどう関わるかです。この記事では、法令と業界団体・メーカーの公表資料だけを使って、判断の順番を整理します。
先に結論
同時にするかどうかは、①屋根と外壁の劣化の進み方がそろっているか ②屋根材が塗装するものか ③石綿の事前調査と報告をどう扱うかで決まります。特に③は見落とされがちです。石綿の事前調査は、解体だけでなく改修の作業にも必要で、面積や金額の下限はありません。さらに労働基準監督署への報告が必要になる改修工事は請負代金100万円以上ですが、同じ業者が2つ以上の契約に分けても、1つの契約とみなして合算されます。「外壁と屋根を別契約にすれば安く済む」という話には、この点で無理があります。
「足場代が浮く」だけで決めないほうがよい理由
同時施工のメリットとして必ず挙がるのが足場代です。足場は1回組めば外壁にも屋根にも使えますから、2回に分ければ2回分かかります。ここは事実です。
ただし、足場を1回にするために、まだ塗り替えなくてよい面を塗ることになるなら、それは前倒しで捨てているのと同じです。たとえば屋根の塗り替えが5年後で足りるのに今塗れば、残っていた5年分は使われません。足場代の節約分と、前倒しで捨てる年数の価値を比べるのが本来の判断です。
その比較、どうやるんですか。
屋根の前回の塗装がいつか、いまどの段階かを先に見ます。そろっていれば同時、ずれていれば別々。金額より先に、この確認です。
足場代に「公的な相場」はありません
先に、この記事で書けないことを書いておきます。足場代の相場を示した公的な資料は見つかりませんでした。国が公表している積算の基準は官庁営繕工事のためのもので、しかも金額ではなく歩掛りです。政府統計にも受注高はありますが、戸建ての足場単価は出てきません。
参考になる公表値としては、国土交通省が示している部位別のリフォーム費用の一覧があります。そこではスレート屋根の塗り替えが20万円〜80万円、外壁材の重ね塗りが50万円〜150万円とされています。ただしこの資料には「調査方法:本資料は、工務店・リフォーム会社・量販店等約40社に対するアンケート及びヒアリング調査に基づき作成したもの。なお、費用はあくまで参考値であり、住宅の状況や工事に内容によっては、異なる場合がある。」という注記が付いています。足場の項目は含まれていません。御殿場での費用感は御殿場市の外壁塗装 費用相場と料金案内をご覧ください。
石綿の事前調査は、塗装工事でも必要になります
ここが、同時か別々かを考えるうえで最も見落とされている点です。石綿障害予防規則では、建築物の解体または改修(封じ込めまたは囲い込みを含む)の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調査しなければならないとされています。
ここに金額や面積の下限はありません
条文は「解体又は改修…の作業を行うとき」と書いているだけで、請負金額や面積の下限がありません。塗装であっても、下地を削る・シーリングを撤去するなど材料に手を加える作業を伴うなら、事前調査の対象になります。
さらに、同じ規則には石綿を含む仕上げ塗材を電動工具で除去する作業についての条文があります(対象は石綿を含む仕上げ塗材です)。見出しは「石綿含有仕上げ塗材の電動工具による除去に係る措置」で、建築物等の壁、柱、天井等に用いられたものが対象です。外壁の下地調整でサンダーやディスクグラインダーを使う場面が、名指しで規制されているということです。下地処理の中身は外壁塗装の下地処理はなぜ重要?高圧洗浄と手抜きの見抜き方で説明しています。

報告が必要になる金額と、「分けても合算される」規定
事前調査の結果は、一定の工事では労働基準監督署長へ報告することになっています。規則が挙げているのは4つの条件で、船舶に関するものを除くと次の3つです。戸建ての塗装で関係するのは「建築物の改修工事」です。
| 工事 | 報告が必要になる条件 |
|---|---|
| 建築物の解体工事 | 解体部分の床面積の合計が80㎡以上 |
| 建築物の改修工事 | 請負代金の額が100万円以上 |
| 一定の工作物の解体・改修工事 | 請負代金の額が100万円以上 |
戸建ての外壁塗装と屋根塗装は、多くの場合この「改修工事」にあたり、金額も100万円前後になります。そこで出てくるのが「では外壁と屋根を別契約にすれば」という発想ですが、規則にはそれを想定した条文があります。同じ事業者が2つ以上の契約に分割して請け負う場合は、1つの契約で請け負ったものとみなしてこの規定を適用する、とされています。
つまり契約を分けても、報告の要否は合算で判断されます。「別々にすれば手続きが要らない」という説明を受けたら、その根拠を聞いてください。なお、これは事業者に課された義務で、施主に罰則があるという話ではありません。
施主にも「協力する」立場があります
石綿の調査は業者だけの問題ではありません。大気汚染防止法では、解体等工事の発注者は、元請業者が行う調査に要する費用を適正に負担することなどにより、調査に協力しなければならないとされています。
また石綿障害予防規則では、解体等の作業を行う仕事の注文者は、事前調査等や作業の方法、費用、工期などについて、法令の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮しなければならないとされています。「調査は要らないから安くして」「その分工期を詰めて」は、この配慮に反する方向の要求ということになります。
同じ規則には、解体等の作業を行う仕事の発注者は、請負人による事前調査等や記録の作成が適切に行われるように配慮しなければならないという規定もあります。調査をさせないことが、施主にとっても得にならないという構図です。

屋根と外壁では、塗り替えの時期がずれます
同時にするかどうかの本題に戻ります。屋根と外壁は別の材料なので、劣化の進み方も手入れの間隔も違います。
| 資料 | 示している目安 | 適用範囲(ここが大事) |
|---|---|---|
| 日本窯業外装材協会 | 塗り替え 7〜12年 | 窯業系サイディングの、一般的なクリヤー塗装の場合という注が付きます |
| 住宅リフォーム推進協議会 | 15〜30年程度 | 「更新」を検討する時期であって、塗り替えの周期ではありません |
| 屋根材メーカー(ケイミュー) | コロニアルクァッドは築10年目以降、10年ごとの定期メンテナンス | 製品によって違います。同社のグラッサシリーズでは、10年・20年は部分補修で、本体の塗り替えは30年前後です。クァッドでは本体の塗り替えが10年・20年にも「美観上、必要に応じて」として入ります。「メンテナンス時期および内容を保証するものではありません」とも明記されています |
| 日本金属屋根協会 | 鋼板の初期塗り替え時期の目安:ポリエステル系7〜9年、フッ素樹脂系20〜22年など | 一般的な環境の場合。厳しい環境では短くなります。住宅に限った数値ではありません |
数字の幅より大事なのは、どの資料も「材料ごと」「条件つき」だということです。外壁材による違いは外壁材で変わる塗装の中身|サイディング・モルタル・ALCに、時期の判断は外壁塗装の時期は築何年?にまとめています。
そもそも塗らない屋根材もあります
屋根用塗料の規格(日本塗料工業会 JPMS 27)は、適用範囲を「主に建築物の既設の屋根,屋上等に塗装する耐候性屋根用塗料」としています。その解説には、想定している屋根材はセメント瓦、繊維強化セメント系屋根材、めっき鋼板などの金属製品だと書かれています(解説は規格の一部ではない、という断りも同時に置かれています)。
粘土瓦については、三州瓦の産地組合である愛知県陶器瓦工業組合の広報冊子に「瓦は基本的にノーメンテナンスです。再塗装も不要です。」という記載があります(三州瓦についての広報冊子で、試験データが示されているものではありません)。
一方で注意したいのは、「この屋根材は塗ってはいけない」と名指しした公的な資料は、今回の調査では見つからなかったことです。インターネットでは特定の製品名を挙げて「塗装できない」と書かれていることがありますが、その根拠がメーカーの公式資料にあるとは限りません。製品名で断定せず、メーカーが公開しているメンテナンス資料で確認するのが確実です。屋根が塗る材料かどうかで「同時塗装」という選択肢が成り立つかが変わりますので、まず屋根材を確かめてください。
屋根の再塗装で直るもの、直らないもの
屋根材メーカーの説明も見ておきます。ケイミューは、同社のスレート屋根材について表面の色が薄くなったり汚れがついた場合でも、屋根材としての基本性能は問題ありませんとしたうえで、美観の維持・向上を図るには再塗装を行ってくださいと案内しています。
雨漏りは再塗装では直りません
同じ資料には「雨漏りは再塗装では直りません。」と明記されています。また再塗装には各屋根材の専用塗料を使うこと、誤った塗装(施工方法)は雨漏り等を引き起こす原因となることも書かれています。「屋根を塗れば雨漏りが止まる」という説明を受けたら、いったん保留してください。
屋根に遮熱塗料を使うかどうかを検討している場合は、遮熱塗料は御殿場で効く?規格は屋根用で外壁は対象外という話もあわせてご覧ください。
つまり屋根の塗装は、美観と表面の保護のための工事として位置づけられています。雨漏りや割れがある場合は、塗装ではなく補修や葺き替えの検討が先になります。この区別は、同時にするかどうかの判断そのものに関わります。

同時か別々かの判断シート
ここまでを1枚にまとめます。上から順に見てください。
| 確認すること | 同時に向く | 別々に向く |
|---|---|---|
| 屋根材 | スレート・金属・セメント瓦など塗る材料 | 粘土瓦など塗装を前提としない材料 |
| 前回の施工時期 | 外壁と屋根がほぼ同じ時期 | どちらかが数年前に済んでいる |
| いまの状態 | 両方に劣化のサインが出ている | 片方だけにサインが出ている |
| 屋根の残り寿命 | 葺き替えやカバー工法を考える段階ではない | 数年以内に葺き替えを検討する状態(塗っても使われません) |
| 足場を使う他の工事 | 雨どい・板金・ベランダ防水などをまとめられる | 他に足場を使う工事がない |
「別々に向く」が1つでもあるなら、足場代の節約より優先して考えてください。特に屋根の残り寿命は大きく効きます。症状から急ぎ方を判断する方法はチョーキング・ひび割れ・コケ|外壁の症状別に見る塗り替え時期にまとめています。
外壁と屋根、まとめるべきかを無料の現地調査で判断します
屋根材の種類と前回の施工時期を確認したうえで、同時と別々のどちらが見合うかをお伝えします。現地調査・診断・お見積りは無料です。しつこい営業はいたしません。
- 見積り無料
- 出張無料
- 相談無料
- しつこい
営業なし
契約前に聞いておく3つの質問
調査を行うか、結果をどう記録するかを聞きます。「塗装だけだから不要」と言われた場合は、下地をどう扱うのかを確認してください。
請負代金が100万円以上の改修工事かどうかで変わります。契約を分けた場合でも合算で判断されることを知っているかどうかで、業者の理解度が分かります。
同時にした場合、次回も同時になります。次の周期をそろえてよいのかを、屋根材の寿命と合わせて説明してもらってください。

まだ迷うなら:次にやることを1つに絞ります
迷っているなら、屋根の前回の施工時期と屋根材を調べてください。新築時の図面か、前回の工事の見積書に書かれています。
この2つが分かれば、同時がよいか別々がよいかはほぼ決まります。分からない場合は現地で確認できます。当社の現地調査は無料で、屋根に上がれない場合も含めて状態をお伝えし、同時にしないほうがよいときはその理由もご説明します。無料の現地調査を申し込むところから始めてください。御殿場市内は出張費もかかりません。
この記事の判断根拠:石綿の事前調査・報告・電動工具による仕上げ塗材の除去・注文者の配慮についての記述は、石綿障害予防規則の条文をe-Gov法令検索で取得して確認しました。発注者が調査に協力する義務は大気汚染防止法の条文によります。事前調査・報告・電動工具による除去についての義務は事業者に課されたもので、注文者の配慮と発注者の協力は施主側に向けられたものです。本記事が扱う範囲では、施主に罰則が科される規定はありません。屋根用塗料が想定する屋根材は日本塗料工業会JPMS 27の解説によるもので、解説は規格の一部ではないと同規格に明記されています。塗り替えの目安は日本窯業外装材協会(窯業系サイディングのクリヤー塗装の場合)、住宅リフォーム推進協議会(更新の検討時期)、ケイミュー(同社製品のメンテナンスの目安・再塗装の位置づけ・専用塗料の指定)の公表資料で、いずれも材料と条件が限定されています。「塗ってはいけない屋根材」を名指しした公的資料は確認できなかったため、そのような書き方はしていません。部位別の費用は国土交通省の資料の参考値で、約40社へのアンケートとヒアリングに基づくものです。足場代の相場を示す公的資料は確認できなかったため、金額は書いていません。同時と別々の判断の考え方は、当社が御殿場市・裾野市・小山町で行っている施工に基づく説明です。
よくある質問
外壁と屋根は同時にやったほうが得ですか?
足場を1回にできる点では有利です。ただし屋根と外壁で塗り替えの時期がずれている場合、まだ使える年数を捨てることになります。屋根材・前回の施工時期・いまの状態・屋根の残り寿命を確認してから決めてください。
塗装工事でも石綿の調査は必要ですか?
石綿障害予防規則では、建築物の解体または改修の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調査しなければならないとされています。金額や面積の下限はありません。下地を削るなど材料に手を加える作業を伴う塗装工事は対象になります。
外壁と屋根を別々の契約にすれば、手続きが減りますか?
減りません。石綿障害予防規則では、同じ事業者が2つ以上の契約に分割して請け負う場合、1つの契約で請け負ったものとみなして報告の規定を適用するとされています。契約を分けても合算で判断されます。
足場代はいくらくらいですか?
足場代の相場を示す公的な資料は確認できませんでした。国土交通省が公表している部位別の費用一覧にも足場の項目はありません。金額は現地の条件(敷地の広さ、隣家との距離、建物の高さ)で変わるため、見積書で内訳を確認してください。
瓦の屋根も塗れますか?
屋根材によります。屋根用塗料の規格の解説では、想定される屋根材としてセメント瓦、繊維強化セメント系屋根材、めっき鋼板などの金属製品が挙げられています。粘土瓦のように塗装を前提としない屋根材もありますので、まず屋根材を確認してください。
同時にすると、次回も同時になりますか?
そうなります。次の周期が屋根材と外壁材の両方に合っているかを確認してください。屋根が先に寿命を迎える場合、次回は葺き替えやカバー工法と組み合わせる選択肢も出てきます。
出典
- 石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)第3条・第4条の2・第6条の3・第9条 — e-Gov法令検索(2026年9月16日確認)
- 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)第18条の15 — e-Gov法令検索(2026年9月16日確認)
- 国土交通省「リフォームの内容と価格について」(部位別リフォーム費用一覧) — https://www.mlit.go.jp/common/000145917.pdf(2026年9月16日確認・約40社へのアンケートに基づく参考値。資料に発行年の記載はありません)
- 日本塗料工業会 規格 JPMS 27:2009「耐候性屋根用塗料」(適用範囲・解説) — https://www.toryo.or.jp/jp/book/files/jpms27.pdf(2026年9月16日確認)
- 日本窯業外装材協会「サイディングの維持管理はどうするの」 — https://www.nyg.gr.jp/toha/pdf/siding.pdf(2026年9月16日確認)
- ケイミュー「メンテナンス」(コロニアルクァッド・グラッサのメンテナンススケジュールと注意事項) — https://www.kmew.co.jp/maintenance/(2026年9月16日確認・2024年7月現在の資料)
- 日本金属屋根協会 テクニカルリポート[64]「鋼板製屋根・外壁の維持保全と点検」(鋼板の初期塗り替え時期の目安) — http://www.kinzoku-yane.or.jp/technical/pdf/201510.pdf(2026年9月16日確認)
- 愛知県陶器瓦工業組合 広報冊子(三州瓦のメンテナンスについて) — https://www.kawara.gr.jp/pdf/reform.pdf(2026年9月16日確認)
- 住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームの基礎知識」 — https://www.j-reform.com/consumer/consumer01.html(2026年9月16日確認)
最終更新:2026年9月



