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外壁塗装の下地処理はなぜ重要?高圧洗浄と手抜きの見抜き方

外壁塗装の下地処理はなぜ重要?高圧洗浄と手抜きの見抜き方

外壁塗装で手間がかかるのに、完成すると誰の目にも見えなくなるのが下地処理です。だからこそ、水圧の数値も、乾燥時間も、ケレンの区分も、出どころのはっきりしない数字が出回っています。この記事では、国土交通省の仕様書と塗料メーカーの製品規格書に実際に書かれていることだけを使って、工事のあいだにご自身の目で確認できることと、見積書で確かめる言葉を整理します。

先に結論

高圧洗浄には、汚れを落とすために行う場合と、既存の塗膜そのものを落とすために行う場合があります。国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書のうち「仕上塗材仕上げ外壁等の改修」を扱う節では、既存塗膜の劣化部の除去・下地処理・下地調整の工法として、サンダー工法/高圧水洗工法/塗膜はく離剤工法/水洗い工法の4つが挙げられ、どれを使うかは特記による、とされています。吹付けタイルやリシンのような仕上塗材の外壁を改修する場合の選択肢です。塗料の塗り替えを扱う章にはこの4工法の規定はなく、下地調整の種別で決まります。なおこの仕様書は国の官庁営繕工事のためのもので、民間の戸建て住宅工事に法的に義務づけられるものではありません。公共工事で国が求めている水準として参照します。確認すべきことは3つ。①洗浄の目的と下地の落とし方 ②工程間の間隔を守れる日程か ③シーリングと洗浄の順番をどうするか。この記事はこの3つを追いかけます。

まず、この記事で使う資料の適用範囲をはっきりさせます

あとで混乱しないように、先に断っておきます。ここを書かずに数値だけを並べると、実際より強い話になってしまいます。

資料 誰に適用されるか 戸建て工事での使い方
公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 国の官庁営繕工事のための仕様書 法的な義務はありません。公共工事で国が求めている標準的な水準として、業者に工程の考え方を尋ねるときの共通のものさしに使えます
塗料メーカーの製品カタログ・規格書 その製品を使う場合のメーカー指定条件 使う塗料が決まれば、そのまま契約上の前提になります。製品名を見積書に書いてもらってください
建設業法 第19条・第20条 民間の戸建て工事を含む建設工事の請負契約。ただし第20条が名宛人とする「建設業者」は建設業の許可を受けた業者を指します(同法第2条第3項) 法律です。あとで詳しく扱います
日本シーリング材工業会のガイド 住宅の外壁改修を対象にした業界団体の資料 戸建てにそのまま当てはまる、数少ない業界資料です

「国の仕様書で決まっているから守れ」とは言えません。言えるのは「国が公共工事で求めている水準はこうなっている」までです。この線引きをしない説明は、正確ではありません。工事全体の流れは当社の料金案内でもご確認いただけます。

下地処理は「洗う工程」だけではなく、工法の選択です

公共建築改修工事標準仕様書の外壁改修工事の章のうち、「仕上塗材仕上げ外壁等の改修」を扱う節が、既存塗膜の劣化部の除去、下地処理及び下地調整について、工法は特記による、としたうえで4つを挙げています。仕上塗材とは、日本産業規格 JIS A 6909 が定めるもので、吹付け、ローラー塗り、こて塗りなどによって立体的な造形性をもつ模様に仕上げる材料です。この節は、既存の仕上塗材仕上げ等を改修する場合のほか、コンクリート打放し仕上げやモルタル塗り仕上げの外壁に仕上塗材塗りを行う場合にも適用されるとされています。


サンダー工法
機械で削り取ります。同仕様書の工程には、粉化物、付着物等は高圧水洗機を使用して除去し、清掃を行う、と書かれています。


高圧水洗工法
高圧水洗機を使用し、既存塗膜及び下地コンクリートの劣化部を除去します。除去した箇所は下地調整塗材でしごき塗りを行い、平らに仕上げるとされています。


塗膜はく離剤工法
薬剤で既存塗膜を軟化させて除去します。


水洗い工法
デッキブラシによる水洗いに代えて高圧水洗機を使う場合は、粉化物・付着物等の除去に適した加圧力のあるものとする、とされています。


同じ「高圧洗浄」でも、塗膜を落とすために使うのか、汚れを落とすために使うのかで意味が違います。見積書に「高圧洗浄 一式」とだけ書かれている場合、どちらの意味なのかは読み取れません。見積書の「一式」表記の見方もあわせてご覧ください。

既存塗膜の除去・下地処理・下地調整の4つの工法を並べた図。公共建築改修工事標準仕様書の仕上塗材仕上げ外壁等の改修の節に示された、サンダー工法・高圧水洗工法・塗膜はく離剤工法・水洗い工法を示した図

ここは正確に区別しておく必要があります。この4工法が並んでいるのは仕上塗材の外壁を改修する節です。塗料の塗り替えを扱う「塗装改修工事」の章には、高圧水洗という語そのものが出てきません。そちらで規定されているのは下地調整の種別(RA種・RB種・RC種)で、たとえばコンクリート面・ALCパネル面の面の処理は、ディスクサンダー、スクレーパー等により行うと書かれています。

そして、既存塗膜をどこまで落とすかについて、同仕様書は塗替えの下地調整について、下地調整の種別がRB種の場合の既存塗膜の除去範囲は特記により、特記がなければ劣化部分は除去し、活膜部分は残すとしています。「全部剥がすのが正しい」わけではないということです。

高圧洗浄の水圧に「業界標準」の数値はありません

ここは、調べるほど混乱する部分です。解説記事では「15MPa」「150kgf/cm²」「80〜150MPa/c㎡」といった数値が並びますが、単位が揃っていません。

公的仕様書は、そもそも数値を定めていません。公共建築改修工事標準仕様書の仕上塗材仕上げ外壁等の改修の節は、高圧水洗機の加圧力は、コンクリート表面及び既存塗膜の付着強度により異なるため、試験施工を行い、監督職員の承諾を受けるとしています。強さは現場ごとに決めるもの、という立場です。同仕様書はまた、高圧水洗機で既存塗膜を除去する場合は施工に関する十分な経験と技能を有する技術者の施工とし、高圧水による事故の防止に努める、とも定めています。

数値が確認できるのは、塗料メーカーが自社製品について示している条件です。エスケー化研は、外壁の改装仕様の注記で高圧水洗(5〜15MPa=50〜150kgf/cm2)にて旧塗膜に付着している塵、ほこり、汚れなどを除去してくださいとしています。

「15」と「150」は、単位が違うだけの同じ数字です

圧力の単位には MPa(メガパスカル)と kgf/cm²(重量キログラム毎平方センチメートル)があり、1MPa はおよそ10.2kgf/cm² にあたります。エスケー化研のカタログが5〜15MPa=50〜150kgf/cm2と両方を併記しているのは、このためです。「15」と書いてある記事と「150」と書いてある記事は、対立しているのではなく単位が違うだけという場合があります。一方で「MPa/c㎡」のように単位が混ざった表記も見かけますが、これは圧力の単位として成立していません。数値だけを取り出して比べても意味がない、というのがここでの結論です。

洗浄後の乾燥は、時間ではなく状態で判断されます

「洗浄後は24時間乾かす」「48時間空ける」という説明をよく見かけます。当社が調べた範囲では、高圧洗浄後の乾燥時間を日数や時間で定めた公的資料は見つかりませんでした。公共建築改修工事標準仕様書の該当する節にも、乾燥時間の規定はありません。

代わりに書かれているのは状態のほうです。同仕様書は3章7節[シーリング]で、下地が十分乾燥した後、油分、じんあい、モルタル、塗料等の付着物及び金属部の錆を除去して清掃する、としています。エスケー化研も、下地はよく乾燥させ含水率10%以下・pH10以下としてください、と記載しています。ただしこれは同社の外壁(新規下地)の仕様の注記で、改装(塗替え)のページには書かれていません。塗替えの現場にそのまま当てはめられる数値ではない、という点は正直に申し上げます。

「◯時間乾かせば安全」と言い切る説明には、根拠がありません。乾き方は、季節・気温・湿度・日当たり・外壁材で変わります。日数を約束されるより、「どういう状態になったら次の工程に進むのか」を説明してもらうほうが確かです。

御殿場では、工期に余裕を見ておく必要があります

塗装ができない条件は、仕様書に明記されています。挙げられているのは5つの条件です。公共建築改修工事標準仕様書の塗装改修工事の章は、気温が5℃以下、湿度が85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わないとしています(採暖、換気等を適切に行う場合はこの限りでない、という但し書きが付きます)。さらに外部の塗装は、降雨のおそれのある場合又は強風時は、原則として、行わないとされています。エスケー化研のカタログにも、ほぼ同じ条件が施工上の注意として書かれています。

御殿場は、気象庁アメダス御殿場の平年値(1991〜2020年)で年降水量2,874.6mm、1月の日最低気温の平年値が-1.9℃です。雨が多く、冬は朝の気温が下がります。つまり、この土地では条件を満たさない日が全国平均より出やすい、ということになります。

サトー建装

梅雨どきや冬の工事で、当初の予定より日数が延びることがあります。私たちはそのとき、無理に進めずお客様にご連絡します。「予定どおりに終わりました」を優先して条件の悪い日に塗ると、あとで膨れや剥がれとして出てくるからです。塗り替えの時期の考え方とあわせて、日程には余裕をみてください。

そもそも今が工事の時期かを迷っている方は、外壁の症状別に急ぎ方を見分ける記事から先にお読みください。

シーリングの撤去と高圧洗浄の順番には、指摘されているリスクがあります

ここが、この記事で最もお伝えしたい点です。工事の順番の話なので、見積書を見比べる段階でしか確認できません。

日本シーリング材工業会の住宅外壁改修のためのシーリング材ガイドは、シーリングを先に施工するか後に施工するかを論じた箇所で、次の趣旨を述べています。改修時期のシーリング材は経年劣化してはく離や断裂している部分があり、そうした部分をそのままにして高圧洗浄の作業を行うと、水が壁内に入り込んでしまい、別の問題が発生するリスクがある。二次防水としての防水シートが健全であればリスクは少なくなるが、経年により防水シートが劣化していることも想定しておく必要がある。そしてシーリング材を撤去してから高圧洗浄する場合には、壁内に大量の水が浸入することになる、というものです。

見積書と工程表で確認してください

「シーリングの打ち替えと高圧洗浄、どちらを先に行いますか」と聞いてみてください。同ガイドは、この順序について当事者間で事前に情報を共有し確認しておくことが大切だとしています。順番に唯一の正解があるわけではありません。大切なのは、業者がこの論点を認識しているかどうかです。答えが返ってこない場合は、他社の見積もりも取ることをおすすめします。訪問販売で契約を急がされたときの対応もご参考にしてください。

シーリングの撤去と高圧洗浄の順番で水の行き先が変わることを示した外壁の断面図。目地が切れたまま洗浄すると壁の内側へ水が入り、目地を先に打ち替えた場合は水が表面を流れ落ちることを示した図

「増し打ち」は、そもそもシーリング工事と呼べないとされています

既存のシーリング材を撤去せず、上から新しいシーリング材を重ねる方法を「増し打ち」または「打ち増し」と呼びます。

日本シーリング材工業会のガイドは、増し打ちでは打ち替えによって期待される性能を発揮させることができないため改修工事とはいえない、として4つの不具合を挙げています。未硬化現象、接着性低下によるはく離現象、旧シーリング材の可塑剤移行によるブリード汚染現象、旧シーリング材の亀裂による膨れ現象の4つです。そのうえで同ガイドは、増し打ちによる施工はそもそもシーリング工事と呼べるものではありませんと記しています。

ひび割れの補修が見積書に入っている場合は、ひび割れの補修方法が外壁材で変わることもあわせてご確認ください。

打ち替えの手順についても、同ガイドは具体的に書いています。旧シーリング材と部材の間にカッターで切り込みを入れてラジオペンチ等で引き抜き、部材に残る旧シーリング材の薄い皮膜もカッターで丁寧に取り除く。この薄膜を残したままでは、プライマー塗布とシーリング材の再充填を正しく実施しても、部材と薄膜との間ではく離するリスクが高まる、としています。

御殿場の外壁塗装、工程表と製品名を明記した見積書をお出しします

現地調査・お見積りは無料です。既存の下地をどう処理するか、シーリングと洗浄の順番をどうするかまで、書面でご説明します。

  • 見積り無料
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プライマーの塗り忘れは、その場で見分けられます

シーリング材を充填する前に塗るのがプライマーです。日本シーリング材工業会は、シーリング材は専用のプライマーとセットで使うことを前提に製品設計されているとし、塗料用プライマーもしくはシーラーはシーリング材用プライマーと兼用出来ませんと明記しています。

そして、施主にも確認できる方法が書かれています。同ガイドは、プライマーは塗り残し・塗りむらのないよう目地の側面に均一に塗布するとしたうえで、薄膜がきれいに除去されていれば、プライマーを塗布した部分が濡れ色になり、塗り忘れや塗り残しを目視確認することが出来ますとしています。基本的には2回塗りが標準とも書かれています。

公共建築改修工事標準仕様書も、プライマー塗布後、ごみ、ほこり等が付着した場合又は当日充填ができない場合は、再清掃し、プライマーを再塗布すると定めています。プライマーを塗った日に充填できなかったら、塗り直しになるということです。翌日にそのまま充填する段取りになっていないか、工程表で確認できます。

塗り重ねの間隔は、製品の規格書に書かれています

「3回塗り」を約束されても、それが1日で終わっていたら仕様どおりとは言えません。根拠を示します。

公共建築改修工事標準仕様書は、各塗装工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、材料の種類、気象条件等に応じて適切に定める、としています。では具体的にどれくらいか。エスケー化研のクリーンマイルドシリコンの外壁(改装)標準施工仕様には、工程ごとの間隔時間が時間単位で示されています。

工程 所要量(kg/㎡) 塗回数 工程内の間隔 工程間の間隔 最終養生
下塗り(水性ソフトサーフSG) 0.30〜1.0 1〜2回 3時間以上 16時間以上
上塗り(クリーンマイルドシリコン) 0.25〜0.35 2回 3時間以上(7日以内) 24時間以上

基準温度は23℃です。下塗りから上塗りに移るまでに16時間以上、上塗りの1回目と2回目のあいだにも3時間以上が必要とされています。つまりこの製品では、下塗りと上塗り2回を同じ日に終える工程は、メーカーの標準施工仕様に沿っていないことになります。エスケー化研は同じカタログで、塗り重ね時間は環境(温度、湿度、換気、風通しやすさ)や膜厚によって変わる、とも注記しています。この数値はこの製品のものです。使う製品が違えば数値も変わります。だからこそ、見積書に製品名を書いてもらう意味があります。

塗装工程のあいだに乾かす時間が必要なことを示したタイムライン。下塗り、上塗り1回目、上塗り2回目、完了の各工程間に間隔があり、記事で挙げたエスケー化研の製品の標準施工仕様では3回塗りが1日で終わらないことを示した図

※上の図の見出しは、ここで挙げたエスケー化研の製品の標準施工仕様にもとづく例です。製品が変われば間隔時間も変わります。お使いになる製品の規格書でご確認ください。

3回塗りは「色を変える」と確認できます

塗り回数をあとから確かめる方法も、仕様書に書かれています。公共建築改修工事標準仕様書は、中塗り及び上塗りの各層の色を変えること等により、中塗り及び上塗りが全面に均一に塗られていることを確認するとしています。

塗った量についても、同仕様書は塗付け量を平らな面に実際に付着させる塗料の標準量(一工程当たり)と定義し、標準量は薄める前のものとする、としています。

ただし、ここは正確に書きます。同仕様書が「使用量から単位面積当たりの塗付け量を推定する」と定めているのは、錆止め塗料塗りの品質確認についてです。外壁の塗装面の仕上がり確認は目視によるとされており、缶数からの逆算を求めているわけではありません。仕上塗材については、防水形の場合に単位面積当たりの使用量で所要量を確認することを標準とする、という規定があります。

つまり缶数から塗付け量を確かめるという考え方自体は公的仕様書にありますが、外壁の塗料塗りに義務づけられているものではありません。それでも、使った缶の数と塗った面積が分かれば、メーカーの規格書の所要量と突き合わせることはできます。先ほどの製品なら下塗りが0.30〜1.0kg/㎡、上塗りが0.25〜0.35kg/㎡です。これは施主が自主的に行う確認であって、業者を疑うための手続きではありません。空き缶を残しておいてもらうよう着工前にお願いしておくと、あとで一緒に確認できます。当社の施工事例でも、工程ごとの記録をお渡ししています。

塗り重ねを確認する2つの方法を示した図。層ごとに色を変えると塗り残しが分かること、使った塗料の量と塗った面積を突き合わせられることを示した図

見積書について、法律で決まっていることと決まっていないこと

「一式表記は違法」という説明を見かけますが、建設業法に「一式表記を禁ずる」条文はありません。正確には、次のようになっています。

条項 内容 強さ
建設業法 第19条第1項 請負契約の当事者は、契約の締結に際して工事内容・請負代金の額・工事着手の時期及び工事完成の時期などを書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない 義務
同 第20条第1項 建設業者は、工事の種別ごとの材料費、労務費などの内訳と、工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を記載した見積書を作成するよう努めなければならない 努力義務
同 第20条第4項 建設業者は、注文者から請求があったときは、請負契約が成立するまでに、その見積書を交付しなければならない 請求があれば交付義務

ひとつ補足します。第20条が名宛人としている「建設業者」とは、同法第2条第3項で第3条第1項の許可を受けて建設業を営む者と定義されています。小規模な工事だけを請け負う業者は建設業の許可を要しない場合があり、そのときはこの条文の対象になりません。見積書の話をする前に、その会社が建設業の許可を持っているかを確認しておくと確実です。

許可を受けた業者であれば、内訳のある見積書はこちらから請求すれば出てくるものです。「うちは一式でお出ししています」と言われたら、内訳見積書を請求できます。第20条第1項が「工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数」まで含めている点も、下地処理の話では重要です。工程と日数が書かれていない見積書は、この記事で見てきた確認をどれ一つできません。

なお、住宅リフォーム推進協議会は住宅リフォーム工事の見積書の標準様式を公開しており、工事項目・摘要(仕様)(単価・数量・時間等)・金額という列構成になっています。これは業界団体の標準様式で、使用は任意です。法的な義務ではありませんが、比較の物差しにはなります。

手抜きを見抜く:工程ごとの現場確認チェックリスト

ここまでの内容を、工事の期間中に手元で使える形にまとめます。見抜き方の実体は、この表の3列目にある「見積書・工程表で確認する言葉」です。工程ごとに何を根拠に判断しているかを説明できる業者と、説明が返ってこない業者は、この質問で分かれます。

2つ補足します。表の「根拠」欄にある公共建築改修工事標準仕様書は国の官庁営繕工事のための仕様書で、戸建て工事に法的な義務としてかかるものではありません。共通のものさしとして使ってください。そして数値どおりでないこと自体が手抜きとは限りません。現場ごとに理由がある場合があります。見るべきは、その理由を説明できるかどうかです。

工程 自分の目で見えること 見積書・工程表で確認する言葉 根拠
着工前 使用する塗料の製品名と、下地の落とし方。仕上塗材の外壁なら4工法(サンダー/高圧水洗/はく離剤/水洗い)のどれか、塗料の塗り替えなら既存塗膜をどこまで落とすか 同仕様書 仕上塗材仕上げ外壁等の改修の節/塗装改修工事の下地調整
シーリング 旧シーリングを引き抜いているか。目地に薄い皮膜が残っていないか 打ち替えか増し打ちか。洗浄との順番 日本シーリング材工業会
プライマー 塗った部分が濡れ色になっているか プライマー塗布日と充填日が同じ日 同上/同仕様書
洗浄 水が届いていない面や、養生の外に飛んでいないか 洗浄の目的(塗膜を落とすのか、汚れを落とすのか) 同仕様書(工法の選択肢は仕上塗材の外壁を改修する節の規定)
乾燥 次工程に進む判断のしかた(時間か、状態か) 一次資料に時間の規定なし
下塗り〜上塗り 層ごとに色が違う 工程ごとの日付と、製品規格書の間隔時間 同仕様書/製品カタログ
完了時 空き缶の数 塗った面積と所要量(kg/㎡)の突き合わせ メーカーの製品規格書。同仕様書が使用量からの推定を定めているのは錆止め塗料塗りの品質確認についてで、外壁の塗装面の確認は目視です
天候 気温5℃以下・湿度85%以上・降雨のおそれ・強風の日をどう扱うか 同仕様書

相談先も知っておいてください。住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住宅相談統計年報2025によれば、2024年度はリフォーム相談の件数が初めて新築相談を上回りました(リフォーム相談11,920件、新築相談11,682件)。同年報は、トラブルが含まれるリフォーム相談7,667件のうち訪問販売に関する相談が652件で、そのうち契約時期が判明しているものの97.5%が契約後の相談だったとしています。困ってから相談する人が圧倒的に多い、ということです。契約前に相談してよい窓口だとご承知おきください。

まだ迷うなら:次にやることを1つに絞ります

確認する項目を並べましたが、最初にやることは1つです。

見積書に、この2つが書かれているか見てください

①使う塗料の製品名(メーカー名と商品名)/②既存の下地をどう処理するか。②は、仕上塗材の外壁を改修するなら4つの工法のどれか、塗料の塗り替えなら既存塗膜をどこまで落とすか、という意味です。この2つが書かれていれば、あとの確認はすべてそこから追えます。製品名が分かればメーカーの規格書で所要量と間隔時間を調べられますし、下地の処理の仕方が分かれば工程表の日数が妥当かを見られます。逆に、この2つが「一式」で済まされている見積書は、比較の対象になりません。内訳見積書は、建設業の許可を受けた業者であれば請求すれば交付されるものです。現地調査と外壁診断を予約する(御殿場市内は出張費無料・所要60分程度)

この記事の判断根拠:既存塗膜の除去工法、高圧水洗機の加圧力、塗装を行わない気象条件、工程間隔、塗り回数の確認方法、シーリングの下地処理とプライマーの扱いは、国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版に基づいています。4つの除去工法が示されているのは「仕上塗材仕上げ外壁等の改修」の節であり、塗料の塗り替えを扱う章には高圧水洗の規定はありません。また「使用量から単位面積当たりの塗付け量を推定する」という規定は錆止め塗料塗りの品質確認についてのもので、外壁の塗装面の確認は目視とされています。この仕様書は官庁営繕工事のためのもので、民間の戸建て住宅工事に法的に義務づけられるものではありません。所要量・希釈率・間隔時間の具体的な数値はエスケー化研のクリーンマイルドシリコン/フッソのカタログによるもので、他社製品・他製品では数値が異なります。含水率10%以下・pH10以下は同社の新規下地向け仕様の注記であり、改装仕様のページには記載がありません。増し打ちとプライマーの扱いは日本シーリング材工業会のガイド、見積書に関する規定は建設業法の条文(e-Gov法令検索)、相談件数は住宅リフォーム・紛争処理支援センターの統計年報によります(すべて2026年9月9日確認)。高圧洗浄後の乾燥時間を日数で定めた一次資料は見つからなかったため、本記事では時間を示していません。また「ケレン1種〜4種」という区分は、確認した2つの公的仕様書のいずれにも存在しなかったため使っていません(両仕様書とも鉄鋼面の素地ごしらえの区分はA種・B種・C種で、塗替えの下地調整の種別はRA種・RB種・RC種です)。「下地処理が仕上がりの何割を決めるか」といった数値も、出所を確認できなかったため書いていません。工程表の組み方と現場での確認の順番は、当社が御殿場市・裾野市・小山町で行っている施工の進め方をもとにしています。

よくある質問

Q

高圧洗浄の水圧は何MPaが正しいのですか?

A

公的な仕様書は数値を定めていません。国の官庁営繕工事のための公共建築改修工事標準仕様書は、その仕上塗材仕上げ外壁等の改修の節で、高圧水洗機の加圧力はコンクリート表面及び既存塗膜の付着強度により異なるため、試験施工を行って承諾を受けるとしています(この仕様書は戸建て工事に義務としてかかるものではありません)。数値が示されているのは製品ごとのメーカー指定条件で、たとえばエスケー化研は外壁の改装仕様で5〜15MPa(=50〜150kgf/cm2)と記載しています。なお1MPaはおよそ10.2kgf/cm2ですので、15と150は単位が違うだけで同じ範囲を指している場合があります。


Q

高圧洗浄のあと、何時間乾かせばよいのですか?

A

当社が確認した範囲では、高圧洗浄後の乾燥時間を時間や日数で定めた一次資料は見つかりませんでした。国の官庁営繕工事のための公共建築改修工事標準仕様書にも、洗浄後の乾燥時間の規定は見当たりませんでした。同仕様書が「下地が十分乾燥した後」という状態を求めているのは3章7節[シーリング]で、塗装の工程についての規定ではありません(またこの仕様書は戸建て工事に義務としてかかるものではありません)。時間を約束されるより、次の工程に進む判断をどうするかを説明してもらうことをおすすめします。


Q

ケレンの3種と4種はどう違いますか?

A

この記事では扱いません。理由は、確認した公共建築改修工事標準仕様書と公共建築工事標準仕様書(いずれも国の官庁営繕工事のための仕様書です)のどちらにも「1種〜4種」という区分が存在しなかったためです。両仕様書とも、鉄鋼面の素地ごしらえの区分はA種・B種・C種で、このうちA種とB種は製作工場等で行うものとされています。塗替えの下地調整の種別はRA種・RB種・RC種です。出所を確認できない区分について断定的な説明はいたしません。


Q

シーリングは打ち替えと増し打ちのどちらがよいですか?

A

日本シーリング材工業会のガイドは、増し打ちについて、打ち替えによって期待される性能を発揮させることができないため改修工事とはいえないとし、未硬化現象・はく離現象・ブリード汚染現象・膨れ現象という4つの不具合の原因になるとしています。同ガイドは、増し打ちによる施工はそもそもシーリング工事と呼べるものではありません、とも記しています。


Q

内訳のある見積書を出してもらえますか?

A

建設業の許可を受けた業者であれば請求できます。建設業法第20条第4項は、建設業者は注文者から請求があったときは、請負契約が成立するまでに材料費等記載見積書を交付しなければならない、と定めています。ここでいう「建設業者」とは、同法第2条第3項で建設業の許可を受けて建設業を営む者と定義されています。なお、その見積書を作成すること自体は同条第1項で努力義務とされています。作成が努力義務、請求に応じた交付が義務、という関係です。


Q

冬や梅雨の時期に工事を頼んでも大丈夫ですか?

A

できない日が出てきます。国の官庁営繕工事のための公共建築改修工事標準仕様書は、気温5℃以下、湿度85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は塗装を行わないとし、外部の塗装は降雨のおそれのある場合や強風時は原則として行わないとしています。戸建て工事に法的な義務としてかかる基準ではありませんが、エスケー化研のカタログにもほぼ同じ条件が施工上の注意として書かれており、実務上の目安になります。御殿場は年降水量2,874.6mm、1月の日最低気温の平年値が-1.9℃ですので、日程には余裕をみてご相談ください。

出典(すべて2026年9月9日確認):
国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」4章 外壁改修工事・7章 塗装改修工事・3章7節 シーリング改修工事
国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」18章 塗装工事
国土交通省「公共建築工事見積標準書式(建築工事編)令和7年12月改定」
e-Gov法令検索「建設業法」第19条・第20条
国民生活センター「住宅リフォーム・点検に関する相談」
住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅相談統計年報2025」
気象庁「アメダス御殿場 平年値(1991〜2020年)」
日本シーリング材工業会「住宅外壁改修のためのシーリング材ガイド」
エスケー化研「クリーンマイルドシリコン・クリーンマイルドフッソ」カタログ(標準施工仕様)
日本ペイント「水性パーフェクトシーラー」製品ページ
住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォーム工事 御見積書」標準様式
最終更新:2026年9月9日

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佐藤春樹

この記事を書いた人

佐藤春樹サトー建装 代表/一級塗装技能士

御殿場市を拠点とするサトー建装の代表。一級塗装技能士として、外壁・屋根塗装を自社施工で手がけています。見えない下地処理から仕上げまで妥協しない施工を信条に、静岡県東部の住まいを守っています。

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